どの分野も素人

a.k.a. チラ裏

刃を研ぐ際に見るべきアニメ1位は『らき☆すた』

 皆さん刃は研いでおられるだろうか。私は日々研いでいる。

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画像はイメージ

 ここでいう「刃を研ぐ」とは7つの習慣的な話ではなく、物理的な刃物を研ぐことである。私は平均して週に1,2頭のイノシシやニホンジカを解体し、解体に用いたナイフは随時砥石で研いで切れ味を復活させている。しかし時には研ぐ暇もなく次から次へと解体することもあり、そうなると刃の切れ味は徐々に落ち、遂には全く切れなくなる。この間研がずに5頭目の解体に着手したら全く切れず、刃を注視したら若干波打ってすらいた。

 全く切れなくなったナイフの切れ味を復活させるには、金か時間をかける必要がある。粗い砥石を買えば手っ取り早く復活させられるが、今月の出費はできるだけ抑えたかったので、私は今ある砥石*1で長時間研ぐ道を選んだ。その際に少々の学びを得たので記事にする。

長時間は研げない

 刃物を研ぐ行為は単純作業の繰り返しである*2。ただただ愚直に、一定の力加減とリズムで砥石の上にナイフを滑らせる。砥石の表面が乾いてきたら水を垂らす。これをナイフが切れるようになるまでやる。それだけだ。

 シカやイノシシを1,2頭の解体をしただけのナイフなら5分も研げば元通りの切れ味になるが、波打った刃を元に戻すのはそう簡単ではない。研いでも研いでも終わりが見えず、気づけば私の手は止まっていた。理由は明白で、飽きたのだ。ただただナイフを滑らせる作業が面白いはずもない。しかし、手を動かさなければいつまで経ってもナイフの切れ味は元には戻らない。どうしたものか。

らき☆すた』を見て機械になる

 森博嗣は自身の著作で次のように書いている。

「集中」とはすなわち、人間に機械のようになれという意味なのだ。集中力というと聞こえは良いけれど、言い換えれば「機械力」が相応しい。人間らしさを捨てて、脇目も振らず、にこりともせず作業をしなさい、ということである。

森博嗣(2018)『集中力はいらない』p.6, SBクリエイティブ.

 なるほど。私に足りなかったのは集中力だと思っていたが、もっと言えば機械のように淡々と作業する能力だったようだ。だが原因がわかったところで、足りない集中力(機械力)がいきなり生まれてきたりはしない。特に打開策を見いだせなかった私は、とりあえずNetflixを開き、『らき☆すた』を見始めた。

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らき☆すた』第1話

 見ている間は手は空いているので、とりあえず研ぎ始めた。するとどうだ。かつてないほど研ぎは捗り、2話分ほぼ休まずに研ぎ続けられ、若干波打っていた刃は元以上に切れるようになった。

ラジオや音楽ではダメなのか

 これまで、ナイフを研ぐ際にラジオや音楽を聴いたことはあった。それでもそれなりに捗っていたのだが、『らき☆すた』視聴時の研ぎの捗りは、ラジオや音楽を聴いた時の捗りとは桁違いだった。一見すると耳だけ取られるラジオや音楽の方が、目も耳も取る『らき☆すた』に比べて私の集中を阻害しないように思えるのだが、現実は逆だった。何故こんなことが起こるのか。

 おそらくは、「ナイフを研ぐ」という作業が簡単すぎるのが原因だ。ナイフを研ぐ際にはほとんど頭を使わないので、ラジオや音楽を聴いてもなお脳のリソースが余る。余ったリソースで他のことを考えてしまい、結果手が止まる。

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研ぎ + ラジオの際の脳内

 これに対して、『らき☆すた』を見ながら研いだ場合はどうか。耳だけで内容を把握できるラジオや音楽とは異なり、『らき☆すた』を見る場合は当たり前だが目を画面に向ける必要がある。そのため『らき☆すた』を見ながらナイフを研ぐと、ラジオや音楽を聴いているときよりも他のことを考える余裕はなくなり、より集中できる(機械に近づける)。

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研ぎ + らき☆すたの際の脳内

何故『らき☆すた』なのか

 これは私の肌感覚でしかないのだが、単純作業のお供に適した映像作品には2つの特徴がある。

  1. 内容が無に近いこと。
  2. 「作品の内容は知らないけど、キャラクターは見たことがある」くらいの作品であること。

 1は首肯しやすいだろう。いくら単純作業のお供とはいえ、緻密な脚本やダイナミックな展開が売りの作品を研ぎながら見るのは難しい*3し、そもそもそういう作品は片手間ではなくちゃんと見たい。そうなると、多少見逃しても見逃した部分が気にならないよう、内容が気にならないもの、平たく言うと内容が無の作品が望ましい。

 次に2の話にうつるが、いくら単純作業のお供とはいえ、全く知らない内容が無の作品を見るのは辛い。2はそういう悲しい体験を回避するための大事なポイントである。一切の取っ掛かりがないと見る気が全く起こらないが、キャラクターというフックがあればまだ見ようかなという気になる。

 この2つの条件を満たすのが、私にとっては『らき☆すた』だった。

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OPサビ前で一瞬だけ映るダブルピースかがみん

 メインの4人は見たことがある。ツインテールのキャラがゆるきゃらと化している*4のも知っている。あとOPも知っている。そしてこれは見始めてから知ったのだが、内容が無である*5。それらを兼ね備えた『らき☆すた』の作業捗らせ力は絶大であり、故に『らき☆すた』を見ながら研がれた刃物の切れ味は一味違うものとなるのだ。

終わりに

 『らき☆すた』は私にとっては最高の単純作業のお供だったわけだが、おそらくこれは万人に適用できるものではない。ただ一般的な傾向として、作業中に何度も端末を操作するのは煩わしいので、ある程度の再生時間のあるものがお供には向いているだろう。

参考文献

 この記事のネタ元。

集中力はいらない

 ミステリィで有名な著者が近年ずっと量産しているエッセィのうちのひとつ。著者の他のエッセィとの内容面での被りが散見されるので、いくつか著者のエッセィを読んだことがあるなら正直読む必要はないと思う。

「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》

 互換性、ひいては標準の歴史を辿った本。前の記事*6でも使った。基本的には物の規格の話をずっとしているのだが、第五章では「科学的管理法」の名のもとに人間の動作を標準化し、機械工に最高効率の働きをさせようとした技術者、フレデリック・W・テイラーの話が出てくる。

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File:Frederick Winslow Taylor.JPG - Wikimedia Commons

 『集中力はいらない』を読むと、テイラーが「人間を機械の代わりにしようとした人」に思えて味わい深い*7

らき☆すた

 2021年11月10日現在、『らき☆すた』はNetflixでも配信しているが、13日に配信が終了してしまう。Huluやdアニメストアでも配信しているようなので、気になる人は早めに見るか、配信しているサービスと契約しよう。

*1:

*2:こう書くとこだわりのある人からは石を投げられそうだが、シカやイノシシの解体に使うナイフぐらいなら実際そうなのだ。

*3:どうしても流し見になるので。

*4:かがみん、不審な男に声掛けられる寸劇 アリオ鷲宮で110番キャンペーン 緊急性ない相談は♯9110に

*5:チョココロネの食べ方とか、普通に見たら見てられないと思う。

*6:罠ガールは槍を作るべき - ラテン語で言えば何でも立派に聞こえる

*7:実際そうなのかもしれないが。