どの分野も素人

a.k.a. チラ裏

君たちは1頭の鹿からソーセージを作ったことがあるか

 鹿が獲れた。その鹿の肉と腸でソーセージを作ってみることにした。

素材集め

 鹿から肉と小腸を取る。肉*1はまあ適当に切り分けてひき肉にすればいいが、問題は小腸の洗浄である。小腸は洗浄して臭いを取らないととても口に入れる気にはならない。洗浄方法は諸説*2あるが、今回は小腸の片端にホースを突っ込んで水流で内部を15分ほど洗った後で一度冷凍し、解凍後に内部にレモン汁を注いでモミモミした。知り合いの知り合いのベトナム人がレモンと塩で小腸を洗っていたらしいので、なんとなく真似してみた。水とレモンのどちらがどれだけ貢献したのかはわからないが、最終的にはほぼ無臭にまでなった。

この写真は大腸だが、まあ大体こんな感じで水を通して洗浄した。出典:https://chikatoshoukai.com/2019-07-09/

実作

 まずは鹿のブロック肉をひき肉にする。

←before after→

 次にひき肉にスパイスと塩を足して混ぜていく。市販のソーセージにはどんなスパイスが入っているのかとシャウエッセンの原材料を確認したら、単に「香辛料」としか書かれていなかった。仕方がないので、今回はパセリ、セージ、ローズマリー、タイムを主軸に適宜ナツメグオレガノ、コショウ、岩塩を足した。

パセリ、セージ、ローズマリー、タイム、ナツメグ

ひき肉にスパイスを混ぜる

 書く順番が前後したが、ひき肉900gに対してマヨネーズを100gほど加えてドーピングを施している。パサつき防止のためだ。
 何度もスパイスの調整、味見を繰り返し、これでいいかなと思えたらいよいよ腸詰めに入る。

←before after→

 詰める過程はあまり余裕がなくて写真を撮っていなかったので、各自脳内で補完してほしい。
 とりあえず見た目は完全にソーセージである。これを70℃ぐらいのお湯で20分ほど茹で*3、最後に焼き目をつけるべくフライパンで軽く炒めた。

炒めた結果無惨な姿になったソーセージ

 炒めたら熱に耐えられなかったのか、腸が一部裂けてしまった。食べてみた感想としては・・・・・・つみれである。おいしいつみれ。どうしてこうなってしまったのか。

反省

 今回の自作ソーセージの反省点は、肉(タネ?餡?)の食感がどうにもソーセージらしくないことと、皮(腸)の食感がまったくパリッとしていなかったことである*4。順に改善策を見ていこう。

 まず肉の食感について。私は今回まずミンサーで粗挽きのひき肉を作った後、その肉をもう一度ミンサーに通して腸詰めした。計2回ミンサーに通したわけだ。そのおかげで肉の粒はだいぶ細かくなったと思っていたが、THE MAKING(216)ソーセージができるまでを確認すると、肉は粒どころではなかった。完全にペーストである。

https://youtu.be/QdL66cX8rCA?t=338

 これと、ミンサーを2回通しただけの肉。食感の違いは明白である。次に作るときは肉をミンサーに何度も通すか、延々フードプロセッサにかけてみることにしよう。あと、上記の動画ではスパイスはホールではなくパウダーを使用していた。その方が肉に馴染むのかもしれない。これも今度やってみよう。

 次に皮(腸)である。ここでひとつ私の頭をよぎるのは、私が小腸と思って持って帰ってきたものはそもそも本当に小腸だったのか、ということだ。「小腸ってアレでしょ?大腸の内側のウネウネしたやつ。それ間違えることある?」とか思ったそこのお前。これが意外とわからないのだ。

File:GI normal.jpg - Wikimedia Commons

 私はこれまで何頭もシカやイノシシやクマを解体している経験上、何度も哺乳類の内蔵を見ている*5が、しかし胃より肛門に近い臓器については恥ずかしながらほとんど見分けがついていなかった*6。食べる臓器と言えば心臓か肝臓の2択だったので、それ以外は見分ける必要がなかったのだ。
 というわけで、私が持って帰ってきたのは本当に小腸だったのか。解体中の写真が残っていたので確認してみよう。マジの鹿の臓器が写っているセンシティブなやつなので、苦手な人はここでブラウザバックするか、薄目で通過してほしい。↓この先100万光年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿の小腸(仮)

 衛生面が気になるかもしれないが、そこは一旦置いておいてほしい*7。この写真に写っている臓器のうち私が切り取って洗ってソーセージの皮にしたのは、左上の、右手でつかんでいる部分である。さて、この部分は小腸だろうか。答えは今でもわからない。ただ右下の暗い紫色の部分(この部分は多分おそらく小腸)と比べると、なんだか見た目が異なる。左上のウネウネは胃から接続していたような気もするし、もしかしたら十二指腸*8なのでは?わからない、なにもわからない・・・・・・。

 というわけで、専門家により作成されたイノシシ・シカ内臓カラーアトラスを参照してみよう。もう1度鹿の臓器が、今度はもっと露骨に出る(警告)。許せ。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000058074.pdf p.15

 うーん、わからん。空回腸というのがいわゆる小腸だが、私がソーセージの皮にした部分とは色が異なるように見える。とりあえずこの写真のおかげで以前より遥かに正確に小腸を判別できるようになったので、今度鹿*9が獲れたらもう1度小腸を取り、ソーセージ作りに再挑戦するとしよう。

参考資料

 この記事のネタ元。

THE MAKING (216)ソーセージができるまで

 みんな大好きTHE MAKING。最近復活した、という報を聞いて私は初めてその存在を知った。ありとあらゆるものが工業的に生産されていく様は見ていて気持ちが良い(一部手作りもあるけど)。

イノシシ・シカ内臓カラーアトラス 肉眼所見 ダイジェスト版 

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000058074.pdf

 67ページもある豪勢なPDF。イノシシ、シカの健康な臓器と、病変したり寄生虫に感染したりした臓器の写真がたくさん載っている。どうやってこんなに症例を集めたのかわからないが、とにかくすごい。税金でこんなものを作ってくれているとわかると、納税にも気合が入る。ちなみに、この資料には

1.野生動物の取り扱いに関する基本的な考え方
1)野生動物は、清浄な環境で飼育された牛・豚などとは異なることから、原則として、内臓は食べないように指導する。 
(中略)
2.廃棄の判断
1)内臓廃棄の判断
(1)肉眼的に異常が認められない場合も、寄生虫感染が認められているため、可能な限り、内臓器については廃棄を推奨する。(基本的考え方1−1)
 食品の安全確保推進研究事業 野生鳥獣由来食肉の安全確保に関する研究班 編 (2014)『イノシシ・シカ内臓カラーアトラス 肉眼所見 ダイジェスト版』p.4 

と書かれている。

最後に

 この記事は野生動物の内臓の食用を推奨するものではありません。よろしく。

*1:モモでもロースでもどこでもいい。最終的にはひき肉にするから。

*2:内部にひたすら水を通す派、小麦粉で洗う派などが一般的。

*3:茹でる温度が高すぎると腸が破裂することがあるらしい。手作りソーセージを作ろう!|おもてなし|S&B エスビー食品株式会社

*4:味は悪くない。調べたら肉の重量の1/3ぐらいのラードや豚背脂を投入してスーパードーピングを施しているレシピもあったので、マヨネーズは2,3倍に増やしてもいいかもしれないが。参考:鹿肉ソーセージ試作(4回目)レシピ完成しました(*^_^*) | パクモグドットコム店長ブログ

*5:ヒトも含めて、哺乳類の内臓のつくりはよく似ている。胃の数が違うとかはあるけれど。

*6:なんとなく見た目が違うな、とは思っていたが、ではどれが小腸でどれが大腸でどれが盲腸か、という見分けはついていなかった。

*7:私しか食べないので。

*8:胃と小腸の間の管。多分。

*9:猪でもいいのかもしれない。